Masuk58.
サイドストーリー3 約束
前編
僕は約束は大抵守る方だ。
果たせない大きな約束とか、小さな事で忘れちゃった約束とかは抜きにして。守れる約束は守る。特に自分から言い出したやつだったら尚更だ。
そんな僕の記憶の中で、破った約束。でも、それでいいと思った約束。その思い出話を聞いてくれるかい。
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僕の名前は賤機光(しずはたひかり)。みんなにはヒカリくんて呼ばれてる。多分苗字が読めないから覚えてもらえてないんだと思う。
職業は雀荘メンバー。メンバーってのは店員ってことね。千葉県にある雀荘『積み木』の遅番を担当してる。
ある真夏のその夜は暇で、雀荘『積み木』には遅番の来客が1人しか無く。僕はその1人のお客さんの話し相手になってた。
その人はお客さんの中でもかなりお金持ちで麻雀も強くて優しくて女性にもモテるんだろうなあ、という尾崎洋平(おざきようへい)さんというお客さんだ。遅番担当の僕は「もう今日は誰も来ないからあがっていいよ」とオーナーに言われた。すると尾崎さんは
「ヒカリくん、じゃあ今からキャバクラでも行こうか。どうせ今帰っても早すぎるだろ? おれは朝まで麻雀するつもりだったんだから付き合ってくれよ。お金は気にしなくていいから」と言われた。
別にいいんだけど自分には付き合ってる彼女がいるので罪悪感があった。だが、麻雀が打てなかったのは2人体制の雀荘の責任でもあり、それについても罪悪感はある。お金気にしなくていいまで言われたら「いいえお断りします」とは言えなかった。
(まあ、一緒にちょっと騒いで飲み物飲んでたまに歌う程度のことだろう。何も問題ないかな)と思って僕はキャバクラに付き合った
119.第伍話 すれ違う2人 その頃、ミサトとキュキュはというと――「ねえキュキュ、まだ麻雀セットが揃うまでは何日か日がかかるから隣町まで移動しようと思うけどどうかしら」「いいんじゃないかな。もうこの街の人たちにはサイコロ麻雀は伝えたし。あとは記事を広めるだけだ。それも出来ることはもうやり尽くした感あるからね。次の場所に移動すべき頃だと思う」「麻雀セットが揃えばまた話は別だけど、今は記事を書くこと。それを広めること。新しい人たちにサイコロ麻雀を教えていくこと。仕事すること。これが主な課題よね」「そうそう、なんにしても延々とここにいるってのもね。結局エルも来なかったし」「『エル』ってまえに相棒って言ってた人のこと?」「そう、彼女ならユキさんを連れてここに来てくれると思ったんだけど。まあ、のんびりした子だからな。どっかで油売ってるんだと思う」「女の子なの?」「ま、僕から見たらまだ子供だね」「ふーん……(人間化した時のキュキュも13歳くらいにしか見えないけど……)」 少ない荷物をまとめると、ミサトとキュキュは都市を出ることにした。行き先は旧首都の隣町。ここより人口は少ないが、首都だった事もある都なのでエルはそこを目指したかもしれないとキュキュは読んだのだ。 ミサトたちが旅に出たそのタイミングでスノウとエルはミサトたちのいた街に到着していた。 すれ違う2人。タイミングは合わない。それでも2人は自分たちの任務を果たしていた。なぜなら、結局それは2人が地球でやっていた事と同じであったから。 新天地
118.第四話 ゴチソウサマデシタ「フゥ、おいしかったぁー」 魔力丼はどこからどう見ても牛丼だった。いや、牛かどうかは分からないけど、味は牛に似てた。つまり、とても美味しい。「ごちそうさまでした!」「スノウ、気になってたんですが『ゴチソウサマデシタ』って何でスカ?」「うん?『ごちそうさまでした』が何かって? ええとね、何だろう……。言われてみると難しいですねぇ。……ごちそうさま、これは多分食事を食べ終えたという報告で、それと同時に作ってくれた人への感謝の言葉なんですけど、でも私たち日本人は料理そのものに対する命への感謝を込めて『ごちそうさま』を使っているかもしれない。……つまり、美味しかったです、ありがとうってことかな」「へぇ、マージにはそんな意味合いの言葉はありませんので『ゴチソウサマデシタ』だけ翻訳されませんでした。でも、素敵な習慣かもしれませんネ。『ゴチソウサマデシタ』これ、マージにも広めたいと思いマス」「いいんじゃない? 流行るといいね」「ハイ!」 魔力丼大盛りを食べて魔力質をしっかり摂取したのでいよいよ次の街への移動をすることにした。(ワクワクするなー。瞬間移動。どんな感じなんだろう)「では、この星で一番栄えてる街まで飛びます。多分そこに私の相棒なら向かうはずですから。あの麻雀小説が飛んできた方角とも一致シマス」「なるほどね。ちなみに、歩いていくと遠いのかな?」「歩くと半日かかりマス」「よし、歩くのはやめときましょう」「ですネ。行き先はトウキョウほどではないですが、大都市ですので色々あって楽しいですよ。ではスノウ、そろそろ行きましょう。私にしっかりつかまっていてくださいネ」「はーい!」シュン!
117.第三話 魔力丼大盛りで「ちょっとー。スノウ! ひとりで行かないでくださいヨー。私の加護(バリア)が届く範囲から出ないでくだサイ」「あ、エル。ちょうどいい所に」「町から出る時は言って下サイ。外は危ないんだカラ」「危ない? モンスターでもいるの?」「ここは田舎なんで、普通にノラの動物たちがイマス。狩人でもないスノウが野生生物と遭遇したら最悪死ぬわヨ?」「えっ、そんな危険なの? でもそれならエルは大丈夫なわけ?」「こう見えて私には高度な性能のバリアがしてあるし武装もしっかりしてるからダイジョウブ」「武装? そうは見えないけど」「いまのこれは『見た目装備』だから。私の武装は見た目がゴツいから好きじゃないノ。最強装備をしているんだけどそれは隠してるってコト」「へぇ、なんかゲームの世界みたいね」「ゲーム?」(あっ、そっかあ。マージにはテレビゲームがないんだった。ていうかテレビもないもんね)「いやまあ、地球にはそういう魔法とか不思議な力の世界のおはなしがあるのよ。現実にはできないんだけどね」「でも、ジドウシャとかバスとかチキュウには不思議なものが多かったワ。マージにはないものばかりで心底驚いたんだカラ」(そっか、マージは魔法があるから科学は発達しなかったのかな。そう考えると魔法も良し悪しね)「あっ、そういえば私の前にいきなり現れたことあったわよね。あの瞬間移動みたいなので次の場所まで行くことはできないの?」「あー、アレねェ。私は時空超えて移動も出来るから次の街まで行くのも造作もないけど、それならご飯にしない? 私いま魔力量が少ないから魔力質になるご飯食べないトネ」(『魔力質』になるご飯……? 糖質とか脂質みたいなもんなのかな) 私たちは一旦また食堂に戻ってごはんにした。「すいません、魔力丼2ツ」
116.第二話 麻雀小説「エルー、エルー」「なんでスカ?」「そろそろ隣町くらいまでは探検したり、ミサトを探したりしたくて……歩幅がこれだとめちゃくちゃ時間かかるから人の姿に戻して欲しいんだけども。人間サイズの服ってどうやったら手に入るかな?」「うん? 服は姿を戻した時に人間時着てたものに一緒に変わりますヨ」「ええっ? 勘違いしてたー。私、服問題があるから戻してもらわなかっただけなのに。早く言ってよ、不便なのよ、もう」「ま、ま、なんにしても少し町を離れた所で変身解除した方がいいですヨ。この辺は本当にクリポンしかいなくて、私も少し目立ってるくらいだから。どこの誰? とか突っ込まれても面倒でショ?」 エルはもっともらしいことを言ってごまかした感じだった。多分、単に戻し忘れてただけだと思う。だってこの町はみんな優しいもん。いまさら私が姿変えたところで意地悪したり敵対したりするとは思えない。 その日の午後。 いつも通り私はみんなに麻雀を教えた。今日の生徒たちは優秀で『スジの概念』を完全に理解してくれた。「そうかあ、麻雀は456などの数字が連続した形(順子)が面子構成に1番効率的だからそれを作るための種として45などのリャンメン待ちを作ってくべきで、捨てた牌で待っている場合ロンは出来ないというルールをそこに加味すると切った牌の3個先はロンされにくいということになるのか~」「飲み込み早くて先生は助かります」 どういう事かというと メンツ構成は同じ牌3個で作るコーツと連続した数字で作るシュンツがあり、同じ絵柄の牌は4枚しかないので4枚中3枚自分で集めるコーツで勝負するのは完成率が低い。なので基本的にシュンツの作成で手を作るものなのだ。 そうなるとシュンツの種を作らな
115.ここまでのあらすじ 飯田ユキと井川ミサトは交通事故寸前で助けられ異世界へと転移する。しかし2人は別々の場所に飛ばされてしまった。 ユキは『スノウ』と名を変えて、自分は神様だと言う女『エル』と共にこの世界に麻雀を普及させる活動を行うことに。 一方ミサトは神様の相棒であるリス仙人『キュキュ』と共にユキを探す旅に出る。 【登場人物紹介】飯田雪(スノウ)いいだゆき主人公。井川ミサトと旅をしている最中に気付けば異世界へと飛ばされていた。本作品内ではスノウと名乗る。井川美沙都いがわみさと飯田雪の親友で麻雀の師匠。異世界に飛ばされてしまった。頼れるリスを相棒にしてユキを探す旅に出る。エル異世界の神様。世界をもっと良くするために麻雀の伝道師となる人物を地球から連れてきた。キュキュ異世界の仙人。知識豊富で使える魔法も多い少年。だが魔力を使い過ぎるとたちまち少年からリスになってしまうという欠点がある。ミサトの肩に乗りながら旅に同行する。その4第一話 伝説の巫女『ヨシエ』 ――約8年前。地球にて「はい、これ。ヨシエが欲しがってたスノウドロップの球根。私が負けたらあげる約束だからね、好きなだけ持っていっていいよ」「いいの? じゃあ持てるだけ持っていこう♪」
114.第六話 麻雀牌生成 ミサトの書いたエッセイ記事は読みやすい大きめな文字で1話2000字ほどにまとめ、それに麻雀牌の挿し絵を描いて創刊号は特別価格とし無料同然で配布することに決めた。まずは読んでもらえないと話にならないから。 そして、最後に ――この物語が面白いと思った方はこれを次の人に回してください。なお、こちらのファンクラブ登録をしてくださると次回作の完成通知を送らせていただきます―― と添えた。元々これをきっかけにして麻雀を広めるのが目的であって本の売り上げで儲けようという意図はないので人に回し読みされた方が都合がいいのだ。 とは言え、2話目からはもう少しお金を取るようにするが。「ミサト、頑張るねえ。仕事し過ぎじゃない?」「私は元からこうだから。出来ることはやる。怠けない。それが私の生き方なの」「って言ったってその疲れた身体で生成魔法使ってたら本当に気絶しちゃうからね」 実はミサトは生成魔法で少しずつ麻雀牌を作っていた。1日に2枚ほどのペースで、主に食後にすぐやっていたが最近では慣れてきたのもあり毎日4枚生成していた。「大丈夫大丈夫。鍛えてるから。私の体力は女流プロでもナンバーワンって言われてたのよ?」 そう言っていたが次の瞬間「あ…… あれ?」 ミサトはクラリと立ちくらみをした。「わわっ!」 よろけるミサトをサッと支えるキュキュ。「もう、いま僕がリス姿だったら大変だったよ。無茶しないで、今日の生成はやめなよ」「……そうね、筋トレして寝ることにするわ」「いや、すぐ寝